北海道からの旅①
北海道からの旅①
旅好きでもあるナナシナ。
実は今年は八月頭から20日ほど、放浪の旅に出ていた。
目的は、湿度からの逃亡。
産まれてこのかた、
熊本の盆地で育ってきた人間からすると
カラッととした暑さというものに憧れがある。
そこで選んだ今回のプランが
北海道まで自家用車を乗せ、フェリーで小樽までの大移動。
そこからするっと、日本を下って帰ってくるという旅に出たのであった。
色々と出会いもあったし、日記がてらにつらつらと書いてみよう。
【北海道までのルート】
色々と悩んだけれどもギターも持って行って行きたかったし
車中泊とかもしてみたかったんで、どうしても自分の車で行ってみたかった
なにより、北海道の広大な土地を、時間を気にせずぷらりぷらりと運転してみたかった。
そうすると熊本からのルートは
①熊本から大分西港へ(車移動;約3時間)
②大分西港から神戸港へ(フェリー移動:約11時間)
④舞鶴港から小樽港へ(フェリー移動;約20時間)
というのが一番よいかと思われた。
単純に足すと
37時間。
意味深な映画のタイトルにでもなりそうな響きだ。
この移動の中で、どの部分が一番辛いかって
何となく
④のフェリー20時間のような気がするんだけど
私的には、
③の神戸から舞鶴までの車移動が断然辛かった。
【神戸~舞鶴間】
この区間、ほんとに何もないのだ。
そりゃ、神戸近辺は色々あるが
一旦市街地を抜けようものなら、周りは山ばかり、
しかも、特に寄りたくなるような場所がないのだ。
途中のコンビニ(夜には閉まるやつ)で買った
大根のど飴を摂取する量もかなり多くなった。
口も心も、寂しくなるのだ。
そんな道を抜け、神戸から京都までずいーっと縦断。
京都の北端あたりに近づき、右に行けば目的の舞鶴港へと向かうあたりで
気になる看板が目に入ってきた。
「←天橋立」
ん、これって、もしかして
信号待ちでSiriに問うと、どうやらあの日本三景がわりと近い位置にあるらしい。
Wikipediaを丸読みしやがる。
知らなかった、九州人にはなじみが薄いのである。
時刻は17時頃、フェリーは23時頃だし、1時間くらいロスするけど
寄ってみよっかな!
軽快にハンドルを左に切る私。
その時の気分次第で行く先が変わる、これがひとり旅の醍醐味である。
「行き先? 未定だよ。それが旅だからさァ」
そのうちこんな台詞を言う機会があるかもしれないな。
格好いい言い方を練習しておこうかな、
なんて思いながら、目的地周辺に到着。
あたりは丁度夕暮れになっていた。
「行き先? あぁ、夕焼けを見ようと思ってさァ。
ただ、そっちの方にハンドルを切ったんだよね」
こういうのもいいな、なんて思いながら
天橋立に到着した。
この頃には、周辺の看板や雰囲気から、
なんとなく天橋立は高いところから見るものなのだなと分かった。
(九州人にはなじみが薄いのだ)
ん?
なるほど、ロープウェイは終わってるか。
どっか車で上るルートはあるのかな。
すると丁度係員が帰宅しようとしていた。
すぐに声をかける。
旅人は常にスマートに行動するのだ。
「あの、上に上る道ってどっちですか?」
「あー、そういうのは、ありませんよ。」
交わされた会話はそれだけだった。
旅人は常にスマートなのだ。
私は天橋立を見ることが出来なかった。
正確には、見た。見たよ。
でも陸から見たら、ただの林だよ。
同じ目線だもの。
なんだい、夕方には営業を終えるロープウェイしか上からの景色を見る方法がないってのかい。
それじゃ、夕焼けの天橋立を見たい旅人はどうしたらいいんだい。
下からみたら、それはもはやただの「ハシダテ」だよ。
もうちょっと観光客に優しくったっていいんじゃないのかい。。。
色んな思いが渦巻いたが。
「思った通りにならないのが旅の醍醐味だからね。」
そう言う練習をしながら舞鶴へとハンドルを切った。
→続く
「ハシダテ」
※このころのiPhoneはカメラが汚れている。
テスト
テスト。テスト。ちゃんと書けているだろうか?
テストといえば、高校生の頃を思い出す。
高校2年。
当時酷く勉強嫌いだった私は、追試験を受けるのが常だった。
追試自体は嫌いではなかった。直前に講座が開かれて、先生たちは猿でも分かるように教えてくれるし、なにしろ追試ではいい点数が取れた。(100点がザラなレベル)
しかし、高校2年の夏。
この年の追試のことを思い出すと、私は切ない気持ちになってしまうのだ。
その夏、中学からの同級生であるU君(以下:アイツ)が、都合により関西へ転校する予定だった。
中学の頃からつるんでいた友人たちは、当然このことを残念に思い、ならばせめてもの思い出作りにと、アイツの出発前日にオールナイトで遊ぶことを企画したのだ。
当然、私もそのことを楽しみにしていたのだが、ひとつ問題があった。
オールナイトの翌日、つまりはアイツが空港を出発する日の朝に、私は追試を受ける予定になっていたのだ。
いくら余裕しゃくしゃくの追試験とはいえ、さすがに睡眠ゼロで挑むのは危険だ。
これにより前日のオールナイトは、早めの帰宅を余儀なくされた。
何よりも、空港までアイツを見送りに行くことが出来ないのがとても寂しかった。
でも仕方ない。追試験なのだ。学校よりすぐりのおバカちゃんに残された最終検問。
いま思えば、高校生の若さにかまけてしまえば、オールナイトでもいけたのではないかと思う。
しかし、神経質なところのある私は、確か3時頃にその会を後にして自宅に帰り、翌日の追試験に備えた。
その夜はとても楽しく、アイツにもう会えないのかと思うと、とても寂しかった。
追試験当日の朝、テストが始まる前に、アイツにメールを送る。
「みんなは一緒に行くみたいだけど、見送りにいけんくてごめん。お前が飛行機乗るころに、丁度試験が終わるくらいだわ。…ま、元気でな!」
切ない気持ちを胸に、試験が始まった。試験監督は六郎先生(仮名)。
ぶっちゃけかなりお爺ちゃん先生で、2年目でもまだ僕の名前を覚えてくれない、なにかと心配な先生だ。
追試験が始まる。
やはりかなり簡単だ。制限時間は60分だが、10分程度で終わってしまった。
ここであるアイデアを閃く。
あれ、これ試験を抜ければ空港に間に合うんじゃね?
その日私は学校までこっそりバイクで来ていた。
もう、これしかない!
意を決して立ち上がる。
出口に向かうと、当然六郎が道を塞ぐ。
「おい、どこにいく?」
「すいません、用事があるので、早退していいですか?」
「お前、これは追試だぞ。試験だぞ。留年がかかっとるのだぞ。馬鹿かお前は。しっかり最後まで考えろ。」
くそっ、これだからジジイは嫌いだ。俺の名前も覚えやしない癖に。
席に戻る。
しかし、それから1分、2分と時間が過ぎ
アイツのフライト時刻が近づいてくる。
まだ、今出れば、間に合う。みんなと、アイツがいる空港に。。。
再度席を立つ。六郎が立ちはだかる。
「お前、馬鹿なのか? 戻れ!」
クッ…
「だいたい、用事ってなんだ。しょうもない嘘はよせ。馬鹿野郎。」
くそう、言いたい放題言いやがって
俺は、俺は、、
「俺は、ただ友達の見送りに、空港まで行きたいだけです。」
その瞬間、六郎は右手に持つ出席簿で私の頭を強く叩いた。
バシッ!!!!
「馬鹿やろう…」
「早く行け!」(ドヤ顔)
えっ、、
六郎
かっけぇじゃねえか。。。
そういうキャラなの、そういうキャラだったの。
かっけえよ。
人の名前すら覚えられないもうろくの癖に、
かっけえよ。
そんな意外な理解者の登場で、
見事私は、空港に見送りに行くことが、できた。
ただひとつ、残念なことは
アイツが飛行機の時間を間違って遅く教えていた為、
私が到着したときには、
全てが終わった後だったということくらいだ。
ありがとう六郎。